日本縦断<10日目>最南端駅でごわす

2018年3月22日木曜日

2015.08日本縦断

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今日はスケジュールに余裕があるので、9時頃と遅めの起床。
これからJR最南端駅を目指し、再び鹿児島に戻る。連泊だと気も楽である。


鹿児島中央駅への道は平坦で、歩道も十分に広く、自転車通行帯も確保されている。天気はあと一歩といったところだが、夏の朝の空気を切って進むのは心地が良い。
さて、これから目指す駅は、指宿枕崎線の終着である枕崎駅と、その途中にある最南端の「西大山駅」である。
指宿枕崎線は海岸線に沿って曲がっているため、途中の駅が最南端にあたる。そのため、枕崎駅は「本土最南端のJR始発・終着駅」と謳っている。限定が多すぎて苦しい…。
ちなみに本当の日本最南端鉄道駅は、沖縄にある「ゆいレール」の「赤嶺駅」である。なので、西大山にも「本土」とか「JR」といった但し書きが必要なのだ。
西大山駅と枕崎駅周辺に備えて自転車も輪行し、いよいよ汽車に乗り込む。
さて、この指宿枕崎線、よくあるキハ40で何の変哲もない車両と思っていたのだが、乗っているうちに恐ろしい事実に気が付いた。
今まで体験したことがないほど乗り心地が悪いのである。 
とにかく揺れる。直下型地震かと思うほどの縦揺れが襲ってくる。車両の端の座席では、尻が浮くほど揺れる。これは全く誇張などしていない。全て事実である。
線路の敷設が適当なのか、運転士が攻撃的なのか、理由は分からないがとにかく最悪である。おそらく国内で一番揺れるんじゃないかと思っている。
とはいえ海沿いを走っているので景色は良い。車窓から外を眺めていると、向かいに座った年配の夫婦に話しかけられた。

夫婦は指宿温泉に向かう途中だという。ご主人は北九州で建設業の社長をしており、仕事に暇ができたので、久しぶりに夫婦で旅行にでかけたのだ。普段は車での移動ばかりで、鉄道を利用するのは何十年かぶり、奥さんに至ってはほとんど初めてのようなもの(!)らしい。
しかし、その初めてがこの指宿枕崎線ではあまりにも可哀想である。案の定、奥さんは「電車ってこんなに揺れるものなんだねえ…」と呟いたのを最後にノックアウト、隣のBOX席で倒れてしまった。この路線だけだと思います。
話し相手が俺しかいなくなってしまったご主人はテンションが上がったのか、持っていたお菓子を大量にくれた。こんなに食えませんが。
「どっから来たのよ」神奈川です。「香川!?」かながわ!「おう、神奈川なら弟が住んでらぁ。神奈川のどこだ」藤沢っていう…「富士山!?」ふじさわ!「知らねえなあ」
そんな会話を続けていると、更にテンションが上がってタガが外れたのか、「わざわざ鹿児島まで来たんだからよ、美味いモン食って帰れよ」と言って諭吉を渡してくれた。

え、諭吉?マジで?

夫婦は指宿駅で降りていった。
あまりにもお菓子が大量だったので、隣の車両にいた鉄道オタクっぽい二人組を捕まえて無理やり分けた。
二人は京都大学の鉄道研究会で、お互い別の旅をしていたが、たまたま日程が重なったので今日だけ同行しているらしい。うーむ、ガチ勢は違う。そのガチ勢すらも「乗り心地悪すぎて爆笑してる」とツイートしていたので、やはりこの路線は全国クラスらしい。
ということで枕崎駅に到着。京大によると、これとペアになる看板が稚内駅にもあるらしい。何日後になるかわからないが、いずれこれを遠く離れた北の地で目にすることを想うと、静かに気持ちが昂ぶってきた。
枕崎駅の時刻表。これは文句なしに少ない。通学通勤の行き帰りと、お昼時以外は全く便がない。特急なども運行していないため、表はスカスカだ。
枕崎駅舎から通りを見渡すと、薩摩半島と指宿枕崎線をモチーフにしたトリックアートが描かれていた。この角度から見ればピンク色の立体的なブロックがあるように見えるが、逆から見れば縮尺の変なただの絵である。
これが「本土最南端の始発・終着駅」。うーん、やっぱりなんとなく締まらない感じだ。枕崎駅は終着駅のくせに無人駅である。ゆえに駅舎もかなり小さい。これも結構珍しいと思う。
汽車はすぐ折り返し運転してしまうので、急いで昼食の調達に向かう。線路が途切れている向こう側を見ると、すぐ近くにスーパーマーケットがあることに気がつく。徒歩2分程度だ。
「美味いもんでも食え!」と言って握らされた1万円札で買ったものは果たして300円の鰹だった。いや、本当に美味かったんでいいんじゃないですかね…。付属の醤油が甘ったるくて、九州に来たんだなあと感じられ。
途中、有名な難読駅を通過する。頴娃と言えば、鹿児島弁の中でも特に難解な「頴娃語」を使う地域だということをどこかで聞いたことがある。読み方だけでなく言葉も難解なのだ。

【動画あり】鹿児島県頴娃(エイ)町の「エイ語」が鹿児島出身のぼくも聞き取れなかった - ねとらぼ


などと言っているうちに西大山駅に到着。京大勢とはここでお別れ、ふたたび一人に戻る。ここで次の汽車が来るまでの2時間半を過ごす。駅のホームにはでかでかと「JR日本最南端の駅」と書かれた看板が設置されている。

また、JR鉄道駅の四端もそれぞれ紹介されていた。現時点ではいずれも行ったことがない。ぜひとも踏破してみたいものだ。
なお、最北端は稚内駅、最東端は東根室駅で確定なのだが、南端と西端はそう単純な話ではない。南端は冒頭で述べたとおり。JR最西端は写真の通り佐世保だが、私鉄も含めると、本土最西端は同じく長崎県の松浦鉄道「たびら平戸口駅」。日本全国でいえばゆいレールの「那覇空港駅」である。なんともややこしい。
とは言えここも立派な「最南端」である。開聞岳をバックに、しばし「端」の旅情に浸る。
浸っていたのだが、中国人の団体が天から降り地から湧いてきて、夜の新宿駅みたいな騒がしさになってしまったので駅から撤退した。
駅前には「幸せの黄色いポスト」。多分なんかの映画にあやかっていると思うのだが、調べてみると、日本各地に何箇所か点在しているらしい。折角なので諭吉をくれた社長に手紙を書いて出してみた。今のところ特に返事はない。
西大山駅周辺は何もない。本当に何もない。あるのは田舎名物メガソーラーと田畑、それにこの「かいもん市場・久太郎」だけである。店名はおそらく"開聞"と"買いもん"をかけていると思われる。
店内は予想以上に品ぞろえが良く、明るい雰囲気がする。ここらに工場や倉庫を構える中園久太郎商店では、地域の特産品を数多く取り扱っており、ここはその直売所というわけである。決して広い店舗ではないが、そのラインナップの多さは、汽車を待つ間の暇つぶしに十分すぎるくらいである。
こちらでは、近くにある県立山川高校の園芸工学・農業経済科の生徒が作った商品が販売されていた。農業高校や水産高校では、生徒の生産したものを売っているという話は耳にしたことはあるが、こうして実際に目にするのは初めてだった。
そしてそんなに高くない。こうして売られているのを見るとつい買ってしまいたくなる。荷物になるので今回は買っていないが。まぁいま考えれば、ジャムでも買って道中適当に買ったパンに塗って食べていくのも悪くなかったかもしれない。
中ではちょっとした食事をとることもできる。ちょっと迷ったが、社長にもらった菓子類と鰹がしっかりと腹に効いていたのでやめた。
店内ではこういうものも発行していた。なるほど、これから行く先々でこういうものを集めたら面白いかもしれない。忘れないようにしよう(この後忘れることになる)
久太郎は楽しかったが、2時間半を過ごすには少々物足りない。散歩でもしようかと駅周辺をうろついていると、謎のシャツイン短パンのおっさんに話しかけられた(写真左)。どうやら現地民のようである。西大山に観光に来た人間を捕まえてはいろいろと話しをしているらしいので、多分名物として語り継がれている気がする。(そのわりにはネット上に情報が無いのだが)
なんと頴娃高校出身ということで、とにかく訛りがスゴイ。今までに体感したことがないほどの訛りだった。かなり標準語に寄せて話しているとのことだが、一人称は「オイ」だし、「じゃっどん」などと歴史ドラマでしか聞いたことのない言葉がナチュラルに飛び出してくる。おっさんによると、指宿枕崎線も廃止の可能性が増してきたということで、残念な限りだそうだ。確かに指宿駅から先は厳しいかもなあ。
勢いづいたおっさんは、一人旅をしているという中国人の女の子まで捕まえて更に盛り上がる。女の子は少々引き気味である。悪い人ではないのだが、かなりグイグイ来る。帰りの汽車が来たので一緒に乗り込むと、おっさんはいつまでも笑顔で手を振ってくれていた。かわいい。
その女の子、阪大の4年生らしく、なんと昨日は同じゲストハウスに泊まっていたらしい…。そういうこともあるものなんですね。地方だと選択肢も限られるからな。
女の子は指宿駅で降りていった。いつも別れは指宿駅である。
クソ乗り心地の悪い汽車で再び鹿児島中央駅に戻ってきた。さて、自転車を担いでホームに降りてみると、まぁとんでもない土砂降りである。こうなると乗るのなんてのは論外だが、持っていくのも袋がびしょ濡れになるので御免こうむりたいところである。すると駅に預けるか、どうか…
自転車が入るサイズのコインロッカーは一日600円。まぁそんなものか、と思ったが、この「一日」というのが「24時間」ではなく、日付が変わるタイミングで一度精算されてしまうので、明日引き取る頃には1200円かかってしまうということらしい。さすがにそれは嫌だ。
なんとかならんものかと頭を捻っていると、途端にものすごいアイデアが閃いてしまった。
そう、駅直結の駐輪所に止めてしまえば良いのである。今日は結局自転車を使う機会がなく、すっかり手荷物の気分でいたが、自転車は自転車。自転車は駐輪場に止めれば良いのだ。こちらは24時間で100円。コレに気付かなかったら1100円も損をしたことになる。駅直結だから雨に濡れることもない。
わざわざそんなコト書くなよと思う人もいるだろうが、この時の自分にとっては天才的な閃きだったのである。折り畳み自転車を携行する人は「ロッカーに入れるのか」「持ち運ぶのか」「駐輪場に停めるのか」「路駐するのか」常にこういう選択肢を頭の片隅に準備しておくのが良いだろう(そもそもロッカーに入るサイズの自転車を持っているやつがいるのかという意見もあるが…)。
というわけで大人しく市電で宿に向かうのである。あ、そういえば晩飯がまだだった。今日はちょっと行ってみたいところがあったのだ。
昨日訪れた、天文館の「こむらさき」。ここの数軒隣に、気になるラーメン屋があったのである。結局あの時は、聞いたことがあるということで「こむらさき」を選んで、結果もにょもにょという感想に至ったので、今日はこちらにする。
「鹿児島ラーメン 豚とろ」はトロトロのチャーシューに味の濃いスープとニンニクがポイント。どれも自分の好きな要素である。文句なしに美味い!いやあ、最初からこっちにすれば良かった。
宿への帰り道、天文館通りを歩いていると、パンの移動販売車を発見。もう、こういうのに弱い。パン屋のパンが本当に好きなのである。ふらふらと吸い込まれてしまった。
こだわりパン あんじぇりこ」は鹿児島市吉野町、ここからちょっと離れた住宅街の中にあるパン屋さんのようだ。ホームページに移動販売の事は書いてないが、今もやっているんだろうか?明日の朝食を買って宿に戻る。

宿に戻るとロビーに可愛い感じの韓国人の女の子がいて、当時の日記によるといろいろ喋ったらしいが、何語で会話をしたのか全く記憶にない。多分、お互いにカタコト以下の英語を使っていた気がする。わぁ、ゲストハウスっぽーい。くそう、英語がもう少し話せればなぁ…と痛感した最初の日であった。

鹿児島中央1005-1252枕崎1318-1428西大山1706-1841鹿児島中央

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